風水街都香港 (上)

「風水街都香港 (上)」川上稔 イラスト・さとやす(電撃文庫1998年)

 都市シリーズと銘打たれている新装カバー版。異設定な香港が舞台。香港を犠牲にして天界を復活させようとするダブルリーたちと、それを阻止しようとするガンマルと香港商店師団(ホンコン・ヤード)と有翼人少女のアキラたち。

 前作の「エアリアルシティ」のように、書物のなかの世界という、やや難解な設定は解除されてだいぶわかりやすくなっている。けど、この造語群を覚えながら読むのはしんどいかも。

 香港では第五次までの大規模な神罰戦があった過去があったりする。今作でも独特の設定が大盤振る舞いで、感情と翻訳したらいいだろうか遺伝詞(ライブ)、そのほかにも拍詞(テンポ)、詞色(ネイロ)、詞階(オクターブ)といった音楽に関連した造語が盛りだくさんで、風水師(チューナー)や五行師(バスター)らが武器と楽器を合体させたらしき神形具(デヴァイス)を使って、魔法らしきものを遺伝詞として繰り出すアクションもの。

 生み出された大型の虎を四十匹の猫に変えてしまったり、ビル群の無数の窓ガラスが粉砕されて、それらすべてが羽に変化する光景があったりと変化球な能力が読んでて楽しい。

 五行師のジェイガンが早々に死んでしまい、その兄であるジェイガンを訪ねてきた陽気な青年のガンマルは、底知れぬ力を見せつける無双キャラ。香港の危機を救うのかどうか、上下巻なので、これまで駆け足気味というか詰め込み展開が解消されてて、ひとつひとつのエピソードをじっくりと読めるようになっていた。