盤上の夜

「盤上の夜」宮内悠介(創元日本SF叢書2012年)

 囲碁や将棋などの盤面勝負を題材にした6つの短編。外国を旅行中に四肢を切断された女性が人身売買され、買い取った男がうつ囲碁を覚えてあれこれあって日本に帰国。たちまちに囲碁界で強者となる。

 物語は、名前の出てこない記者によるインタビュー形式、もしくはドキュメンタリな記述のもので、どことなく古い感じはするものの、パッドといった記録媒体がその世界では日常的に使われているものとして登場する。ここだけSFを感じたのだけど、別にそれを省いてもなんら遜色しない。というよりも、なぜいれた。

 どの作品も異質な勝負師たちがそれぞれの人生すべてを賭したものとなっていて、自然とその人物の一生を追ったものになっている。あちこちでやたらと死がちらついていて、原爆などの内容も出てきて無常を感じた。