魔女の絶対道徳

「魔女の絶対道徳」森田季節 イラスト・NOCO(ファミ通文庫2012年)

 タイトルから哲学っぽい内容かと思ったけど、天狗の血を受け継いだヒロインの輪月(わつき)がいて、異形が出現するといろいろな均衡が崩れて、命を落とす宿命を背負った男子高校生の頼斗(らいと)がいて、ヒロインがセクハラトークしながら天狗の存在は社会から見てどうのとか、吸血鬼の存在はどうかとか、修羅という異形にはかなわないといった伝奇的な話題が出つつ、主人公とヒロインのボケツッコミ漫才トークを楽しむのがメインであって、バトルやらなんやらは添え物程度に楽しむのが吉。

 武芸が達者と自称するわりにまるで活躍しない主人公。自分としては、いかに効率よく戦略を練って敵と戦うというのが好みなので、この点ではかなり拍子抜けしたか。

 一応、少しだけミステリ成分があるけど、こっちはおまけ程度。主人公の周辺に異形の女子キャラが集まってきて、それとなくハーレムっぽくなってるんだけど、メインヒロインをそれほどかわいいと思うまでには感情を動かされなかった。対立する吸血鬼少女の知理は、恋愛とかをわりきって考えてはいるけど、それなりに羞恥心を持ってて純情を保とうとして赤面したり主人公に好意を寄せたりして、こちらのほうがかわいいかと。あと、最後に出てくるチートな異形キャラにも、登場シーンは少ないもののかなりよかった。