神々は沈黙せず

読書「神々は沈黙せず」山本弘(角川書店2003年)

 南京大虐殺の論争において、可能な範囲で資料を調べて議論をする姿勢からはじまり、UFOや心霊現象に宇宙人、聖書やキリスト教にカルト教団など、おそらく事実をわかりやすい議論に落としこんでて理解しやすい。

 超能力の典型であるスプーン曲げを例にあげて、数々のトリックをする子供たちがいて、本当は能力を持っているとする発言があり、トリックだと暴かれてもそれでも盲信する人たち、そしてなぜ超能力という現象が起こるのかを、著者ならではの答えを示してて、これがなかなかにユニーク。

 ネタバレになるのだけど、物語が中盤をすぎたころ、宇宙は壁に囲われた世界である事実が発覚する。この現象によって世界各地で様々な混乱などが起きる。この本は、実際の史実をしっかり描いてて、「もしも」のシミュレーション小説としても読むことができる。

 この物語を読んでいると「信じる」というキーワードが自然と浮かび上がるようになっている。人間がなにかの不可解な現象に遭遇したときに、どうやって解釈されてしまうのか。宗教とはなにか。神とはなにか。著者は独自の答えを大胆に提示する。