菊池君の本屋 ヴィレッジヴァンガード物語

「菊池君の本屋 ヴィレッジヴァンガード物語」永江朗(アルメディア1994年)

 今は全国展開している個性的な本屋のヴィレッジヴァンガードの、5店舗展開した頃の本。

 ヴィレッジヴァンガードは本屋ではあるけれど、徹底して若者向けに特化した本だけを厳選して本棚に並べ、同時に様々な雑貨も取り扱う。

 フリーライターである著者のパートでは、イーストという店舗の起ち上げ時の初期費用から詳細な月別売り上げが掲載されている。そして創業者のパートでは、とにかく売れる商品の流通ルートをあの手この手で探しだして仕入れてくることや、いかにしてお客に訴えかけて売るか、ということに情熱と執念を燃やしている。在庫がなければ向かいの本屋で買ってきてでも仕入れてくると豪語していて実際にやった気配。

 以前、古書店や背取りで成功した人の本を読んでいたとき、それぞれの著者は、本をあくまでも商品として扱い、決して読書家ではないと明かしていた。ヴィレッジヴァンガードの創業者も、自分の店舗に置いてある本で読みたいものはないという。趣味はほどほどにして、あくまでも商売人であることを重要視しているのがうかがえる。お客の心をつかむセンスは凄まじいものを感じさせられた。

 でも、ビリヤード台を什器にしたり、自転車や10万円で買った飛行機を店内に飾るとか、店内を一望させるのに入り口の3メートルの階段を上がらせて、またすぐおろさせるとか変な趣味があるけど、これが集客に貢献している(?)ところが面白い。

 本の後半は、ブックガーデンの江口淳、そしてリブロの今泉正光という人との対談がそれぞれ収録されている。どちらもまったく存じ上げない(ごめんなさい)。

 もう20年前の出版なのだけど、当時の地元のアルバイト雑誌や草の根通信ネットでこのお店の情報はよくはいってきていた。でも、わざわざいくには遠かったし、自分とはちょっと合ってないと感じていたので一度もお店を訪れたことはなかった。現在では近くのショッピングモールに出店してもいるけど、すでに対象年齢をはるかに過ぎてしまったので素通りしている。

 それと、当時、一度だけバイト募集を目にしたことがあって、すごく安かった。今の時給で750円ぐらいと言われれば実感できる思う。でも、やりがいはあるし、時間があっという間に過ぎるよと創業者は語っている。

 いまさらながら一度ぐらい当時のお店をのぞいておけばよかったと、少し後悔している。