向日葵の咲かない夏

「向日葵の咲かない夏」道尾秀介(新潮文庫2008年)

 2005年に刊行されたものの文庫版。

 小学生のミチオが同級生の家に夏休みの宿題を届けにいったら、そのS君が首吊り自殺してて、死体は消えてしまう。でも痕跡はあるということで警察は行方不明として扱う。ミチオが自宅に帰ると蜘蛛になったS君が現れて……。

 タイトルから「スタンド・バイ・ミー」みたいな文学っぽい作品なのかと思ってたら、これはくわせものだった。

 ミチオの母親がどうも精神状態がおかしかったり、登場人物の名前もカタカナで苗字か名前かわからず、妹のミカをはじめとして妙に外観描写をしないなと疑問に思いながらもファンタジー要素がありつつ、そこに担任の岩村先生の特殊な性癖描写というしっかりとした社会的基盤を構築していて、これにサイコな要素も加わって妙な感覚が混在した独特なものがあった。