墨攻

「墨攻」酒見賢一 挿画・南伸坊(新潮文庫1994年)

 森秀樹のマンガ版を連想しながら読むことができたのでイメージしやすかったけれど、この原作小説は相当に濃縮してあって、それなりに攻城戦についての知識がないとしんどいだろうなと。

 侵略戦争に異を唱える墨子教団。その教団の戦闘技術などの知識に物理や経済などの見通しがあったくだりは初めて目にしたけれど、これは史実なのだろうか。

 本編は、梁城の要請に応じて墨子教団かr派遣された革離(かくり)が、趙軍2万の軍勢から守城することになり、規律を順守させるためならば味方であろうと殺しまくる。

 民衆の士気をあげるために罪人を処刑して誰かわからないように顔をつぶして趙軍にやられたと偽装して恨みを喚起させるとか、やることなすことえげつない。

 原作小説はマンガ版とは違った結末を迎える。ネタバレになるけれど、革離は最終的に、とある人物によって殺害されてしまう。どうしてそうなってしまったのか、誰が革離を殺したのか、革離が守っていた城はその後どうなったのか。それらを楽しみながら読むのもまた一興。