流浪刑のクロニコ

「流浪刑のクロニコ」菅野隆宏 絵・遠藤達哉(ジャンプJブックス2013年)

 いくつもの世界をさまよう罰を「授けられた」クロニコが、いろいろな刑の少女たちと出会っては別れていくという連作エピソードで、閉ざされたような独特の世界が魅力的。

 最初のエピソードの石積みの塔をつくる刑になっている少女の話で、希望を持ちつつも絶望的な状況になったときに、主人公のクロニコが別の視点を持ち込むことで、少女の視野がパーッと広がる展開はよかった。

 ところが、話が進むにつれて物語に勢いがなくなっていく。クロニコはいくつもの世界をさまよっているという設定のわりに、石積み刑の少女のことをことあるごとに思い出し、窮地に陥った際にはこの少女が重要な存在にまでなる。永遠にさまよっているというわりには、ついさっき流浪刑になったばかりなのかと、それがどうにも頭にひっかかってしまった。終章に登場する人ならざる者の存在も、ちょっと理解が追いつかないというか、最後になってあれこれあるというのも、どうにも釈然としない。

 電撃文庫の「キノの旅」と似通っている設定で、それなりに差別化しているんだけど、なんとも惜しい。