アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム

「アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム」茜屋まつり(電撃文庫2012年)

 ドジっ子だけど銃撃に関しては脅威の潜在能力をもつアリスが、地面から掘り起こしたのは意思をもって喋ることのできる銃のマグナム。マグナムの指示のもと、アリスは幼女魔女のゾォードによる世界殲滅を阻止することに。

 過去と現在と未来のそれぞれのシーンがエクスキューズなしに切り替わるので、場面を理解するのが大変。それに加えて、マグナムが完全なる語り手となっているのだけど、「誰がどうした」という注釈がないので、まるで銃のマグナム自身が人間になって歩き回っているのかと思うことしばし。

 やや難のある構成だけど、銃や西部劇に関する用語や造語などはセンスを感じて楽しめた。

 ところがなのだけど、アリスを含めた主要キャラたちが、今そこにいるはずなのに、なにこの空気感。存在感がおそろしく希薄。目的地に向かう道程でのやりとりががまるでないとか、ちょっと奇妙。

 マグナムが過去をもう一度やり直すというループ的設定は、自分的にヒットするところがあって、読み進める牽引力になっていたのだけど、治癒とか付与などの弾丸魔法が登場した途端に、急速に萎えるものが。まさか、そういう世界観だとは思ってなかったというか、こういうのを出すとなんでもありになるので、口惜しいというかなんというか。

 それぞれのゾォード討伐メンバーにあれこれ指示を出すマグナムだけど、ことごとく失敗するというか、ある部分ではドジっ子アリスが勝手に暴走する場面があって、そこはギャグ展開として愉快だったものの、マグナムはどうやら人の上に立つ指揮官(武将)としては無能だと思われ。そこが自然と物語のキモになるのだけど、これをうまく活用しきれてないというか、なんというか。

 世界観と時間巻き戻し設定など、ある部分では作りこんであるのに、多くのパーツが既成品で、ここは残念無念。あと、アリスは容赦なく悪人を射殺してて、それに対して良心の呵責がまったくないのは、引っかかるものがあった。