ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を

「ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を」菊地敬一(リブリオ出版1997年)

「週刊新刊全点案内」に掲載されていたものをまとめたエッセイ集。

 自分への給料を新規店舗の開業資金にまわして、それが趣味だと豪語する著者。いかにして利益をあげるかということにはしっかりしていて、内装工事費を安く済ませる方法を考え出すなど、資金繰りをどうやってやりくりしているかが具体的に書いてあり、順調に店舗を増やしている。

 ほかにも、店で働くアルバイトや店長候補の話題、新規店舗のオープンまでのすったもんだに本屋に関わる店員や開業したい人たちのおそらく仮想の悩み相談をはじめ、著者は地図が読めないという本とはまったく関係のない話題までも含めて、毎回ユニークに語っている。森見登美彦のような文体に似ていて、読む人を面白がらせようとするサービス精神に感心。

『先日、ある銀行がきて、決算書を見るなり「忙しいでしょう」とニヤッと笑いながら言った。なかなかスルドイ奴である。
「決算書見ただけでわかるんだ」
「わかりますよ。社長さんの一か月が手にとるように。月に一〇回は銀行に走っているでしょう?」
「いやあ参ったなぁ。すごいもんだなぁ」
「利益が出ているのに、キャッシュフローが足りない。典型的な自転車操業ですね」
「いや、うちはオートバイ操業と言っている。倒れたら死ぬ」
 このギャグはすでに使ったかもしれません。もし使っていたら「典型的な自転車操業ですね」「健康的だろ。お陰様で体だけは丈夫になったよ。担保はこの肉体だけ」に差し替えて下さい」』

 この本、ほとんどこんな感じです。