マグダラで眠れ(3)

「マグダラで眠れ(3)」支倉凍砂 イラスト・鍋島テツヒロ(電撃文庫2013年)

 錬金術士のウェランドが貴族の娘に結婚を申し込まれて囚われの身となり、腐れ縁のクースラは無視して異教徒の町のカザンに向かおうとするが、どうなる? という3巻。

 このシリーズは錬金術とうたいながらも、拍手して鋼を出すといったファンタジーではなく、鍍金(メッキ)をしたり、鉄の鍛錬の度合いを向上させたり、金を効率よく抽出するという戦闘シーンのないすごく地味です的な内容です。

 主要キャラのクースラにしてもドライな性格をしていて、イラストもどこか退廃的な絵柄で、どこにウケる要素があるのかまったくわからないまま、3巻で打ち切りになるかと思ってたら4巻が発売されて、しかも続刊予定ときいて、どこが面白いのか誰か教えてくれと、大変失礼な感想で申し訳ない。

 地味でありながらも、体の一部分が獣な修道女のフェネシスが、錬金術を覚えようと必死になっていて微笑ましいと思っていたら、旅の知識が豊富で必要なものや行程にまつわるトラブル対策などもしっかりと披露してみせて感嘆する場面も。

 他人に対して情を抱こうとしないクースラの、その心情をはっきり書かず、読んだ人に判断をゆだねるというのがちょっとしんどいというか、物語がクースラとフェネシスの腹の探り合いをしながらの掛け合いに重点をおいたつくりになっていて、日常生活で散々そういうのをやって辟易している自分にとって、この作品は苦手です。同じ作者による「狼と香辛料」も主要キャラ二人による探り合いの掛け合いだったので、こちらも苦手でした。

 クースラがとある錬金術を見せる場面は、変わりもの好きな大公に対してはちょっとお粗末かなと思ったし、フェネシスがとある算段をいつから画策していたのかとか、それじゃあ説明不足だろと言わざるをえないというか疑問符がすごく浮かんできたけど、そこをツッこむのは野暮なのだろうか。

 それと、「っ」と「う」を多用するのを、どうか勘弁してくれまいか。