冬のフロスト(上)

「冬のフロスト(上)」R・D・ウィングフィールド 芹澤恵訳 カバーイラスト・村上かつみ(創元推理文庫2013年)

 フロスト警部シリーズの第5弾。デントン署の人員が他の署の要員として出払っており、人手不足に困窮しているというのに、次から次へと事件が発生して、手がかりもまるでつかめず、捜査にいきづまるフロスト警部。

 ジャック・フロスト警部は下ネタ大好きで、嫌味な署長のマレットのことをいつもネタにして笑いをとったり、勤務実績の数字をごまかしたり、管轄内で起こった事件を一人の犯罪者がやったことにしたてあげるのは日常茶飯事。

 立て続けに起こる事件にうんざりしつつも、長年の経験からくる勘を働かせて粘り強く地道な捜査を続けて、あとから発生した事件から手がかりとなる糸口をつかんで、ジワジワと真相に迫っていく。

 フロスト警部には、名探偵ばりの頭脳明晰さはまったくなく、睡眠時間を奪われ、眠気を我慢して現場検証をしたり、捜査指示を出したりして悪態もつくけれど、冗談が好きで仲間思いでもあって、ワーカーホリック的に動き続ける。

 ちなみにこのシリーズを知ったきっかけは、「神戸在住」というマンガ。このマンガの主人公である女子大生が、「クリスマスのフロスト」を笑顔で友人に見せているコマがいまだに覚えている。