冬のフロスト(下)

「冬のフロスト(下)」R・D・ウィングフィールド 芹澤恵訳 カバーイラスト・村上かつみ(創元推理文庫2013年)

 児童連続誘拐殺人、怪盗枕カヴァー、そして娼婦をねらった連続殺人に悩まされるフロスト警部。

 事件に関連した人物を片っ端から容疑者だと決めつけ、脅し文句などを散々言った末、容疑者には完全無欠なアリバイがあって無関係に終わり、訴えられると怒鳴られるが、相手のうしろめたいことを指摘してやんわりお帰りいただく、というのを何度も繰り返してて、いっこうに捜査に進展が見られず、読んでてちょっとダルさを感じざるをえないところがあったのはたしか。

 フロスト警部の相棒のマービンが、致命的なミスを頻繁に起こし、ついには女性刑事のリズ・モードが事件に巻き込まれて行方不明になってしまう。

 ところで、このリズ・モード刑事は作中で妊娠していたことに気づき、すぐに堕胎している。それをフロスト警部たちは知ってしまうのだけど、彼らは無言で聞かなかった状態にしていたのが読んでて疑問であった。イギリスでの堕胎行為の扱いはどうなんだろうか。だからなのか、ひとつの生命を処分した罰とでもいうんか、リズ・モードには最悪の悲劇が訪れることになる。

 シリーズを重ねるごとにページ数がどんどん膨らんでいき、今作では上下巻合わせて1000ページもある。もうちょっとコンパクトにまとめてもらってもいいのではと、余計なことを考えてしまったけれど、読み応えは抜群だった。